WINSPACEの「HYPER 2 ライザーハンドルバー」です。
最近では、ハンドル位置を高くしたほうが空力的に有利になる、といった話も比較的よく見かけるようになりました。
今回はその話について深く掘り下げるわけではありませんが、そうした流れもあって、以前から個人的に気になっていたハンドルバーの一つです。
今回、T1600 ULTRAをお借りする機会があり、その車体にちょうどHYPER 2が装着されていました。せっかくなのでT1600 ULTRAそのものだけではなく、HYPER 2についても実際に走って確認してみることにしました。
私自身、普段使用しているSLC5には初代HYPERハンドルバーを装着し、長期間使用しています。
今回は、単にHYPER 2を使ってみた印象だけではなく、普段使っている初代HYPERと比較しながら、その違いについても見ていきます。
通常の一体型ハンドルとは違い、ステム部分から左右のハンドルへ向かって大きく持ち上がるような形になっています。中央部分はかなり絞り込まれており、正面から見るとY字に近い形状です。
HYPER 2の大きな特徴が40mmのライズ量です。
一般的な一体型ハンドルと比べて、ハンドル位置を高めに設定できる形状になっています。
Reachは73mm、Dropは123mmで、この二つの数値については初代HYPERと同じです。一方で、ステム角は初代HYPERの7°に対し、HYPER 2では11°へ変更されています。
▶HYPER 2を使ってみた
①高い剛性感
そして実際に走ってみて最初に感じたのが、ハンドルの剛性です。
これはかなりしっかりとした剛性感があります。
ライザー形状で、しかも中央部分が細く見えるため、写真だけを見ると多少しなりそうに思えるかもしれません。しかし、実際に使った印象はまったく逆でした。
ダンシングで車体を左右に振ったとき、強くハンドルへ荷重を掛けたとき、あるいは高い出力で踏んだときでも、ハンドル周辺に曖昧さを感じることはありません。
私が普段使っている初代HYPERも、かなり剛性の高いハンドルです。薄いトップ形状なのに驚くほど硬く、これまで使っていて剛性不足を感じたことはありません。HYPER 2についても、その部分はしっかり引き継がれているように感じます。
また、軽量カーボンハンドルの中には、コントロールレバーのクランプ部分にかなり気を使う製品もあります。締め付けを繰り返すことでクランプ部分が変形してしまうものもありますが、私が使ってきたZERO SLや初代HYPERを含め、そのような不安を感じたことはありません。
HYPER2についても、今回使った範囲では剛性不足を感じることはなく、クランプ部分を含めて気になる点もありませんでした。
②上ハンドル
HYPER 2を写真で見ると、もう一つ気になるのが上ハンドルです。
中央部分が大きく絞り込まれているため、「上ハンを握る場所がほとんどないのでは?」と思うかもしれません。
もちろん一般的な丸ハンドルや、初代HYPERほど広い範囲を自由に握れるわけではありません。またハンドル幅や手の大きさによっても印象は変わると思います。
それでも「Y字形状だから上ハンはほぼ使えない」というほどではなく、巡航中に手を置いたり、姿勢を変えたりする程度であれば普通に使うことができました。
③下ハンの形状
一方、初代HYPERと比べて個人的に違いを強く感じたのが、下ハンドルの形状です。
HYPER 2は初代HYPERと比べると、下ハンへ向かうカーブが浅く、緩やかに曲がっていくような形状になっています。
これは完全に好みの部分だと思います。
私は普段から初代HYPERを使っていることもありますが、下ハンについては初代HYPERの深いカーブのほうが好みでした。
同じReach、同じDropでも、実際のカーブが変われば握った感覚はかなり変わります。
初代HYPERはカーブが深く回り込んでいるため、下ハンの奥まで手を送ったときに、より深い前傾姿勢を取りやすい形状です。一方、HYPER 2はカーブが浅く、下ハンを深い位置で握っても、極端に深い姿勢になりにくい形状に感じました。
Dropそのものは同じ123mmですので、単純にどちらが低いという話ではありません。カーブの作り方によって、実際に手を置く位置や身体の姿勢が変わってくるということです。
このカーブ形状の違いは、双方のハンドルが狙っているポジションや使い方の違いから生まれているのかもしれません。
このあたりはスペック表だけでは分からない部分です。
④ライザー形状
そしてHYPER 2を選ぶ最大の理由になるのが、やはり40mmのライザー形状です。
一般的なハンドルでハンドル位置を高くしようとすれば、コラムスペーサーを増やしたり、角度の付いたステムを使ったりする必要があります。
HYPER 2であれば、ハンドルそのものに大きなライズ(上方へのオフセット)があるため、ステム取付位置を低くしたままハンドル位置を高くすることができます。
今回借りたT1600 ULTRAと、私のSLC5を並べてみると非常に分かりやすいです。
フレームのStackはSLC5のほうが約10mm高いのですが、写真の状態で実際のハンドル上面を比較すると、およそ30mmの高さの違いがあります。
数字だけで40mmライズと言われるより、実車を並べたほうが違いはかなり分かりやすいと思います。
ハンドル位置を上げたいけれど、大量のコラムスペーサーを積みたくない。あるいはフロント周りをすっきりさせながら高いポジションを作りたい。
そういった場合には、HYPER 2はかなり有効な選択肢になります。
ただし、ここには一つ大きな注意点があります。
▶HYPER 2 ライザーバーの注意点
①コラムスペーサーを減らす影響
HYPER 2を使ってポジションを作る場合、注意したほうがよいポイントはステム長です。
「40mm上がるのだから、その分スペーサーを減らせば同じポジションになる」
単純に考えるとそう思ってしまいます。
しかし実際には、そう簡単ではありません。
自転車のコラムは垂直に立っているわけではなく、後方へ傾いています。そのためコラムスペーサーを減らしてステム取付位置を下げると、ステムは下へ移動すると同時に前へ移動します。
たとえばヘッド角72°の場合、コラムに沿ってステム位置を20mm下げると、垂直方向には約19mm下がりますが、それと同時に前方向へ約6mm移動します。
つまり、ライザーハンドルによって高さを確保し、その分コラムスペーサーを減らした場合、ハンドル位置は高低だけではなく前後方向にも変化するということです。
仮に、コラムに沿ってステム取付位置を40mm下げたとすれば、ヘッド角72°の場合は約12mm前方へ移動します。
HYPER 2の40mmライズ=コラムスペーサーを40mm減らせる、という単純な計算ではありませんが、ライザーバーを利用してステム位置を大きく下げれば、それだけハンドルの前後位置にも影響が出るということです。
これは、HYPER 2のステム長を選ぶうえでかなり重要なポイントです。
②SLC5とT1600 ULTRAの実例
今回の私のバイクが、ちょうど良い例になりました。
普段使用しているSLC5には、初代HYPERの115mmを装着しています。一方、今回借りたT1600 ULTRAに装着されていたHYPER 2は105mmです。
数字だけ見れば、105mmのHYPER 2のほうが10mm短いので、当然ハンドルも近くなるように思えます。
ところが実際に乗ってみると、T1600 ULTRAのほうがむしろハンドルが遠く感じました。
もちろんこれは、HYPER 2だけが原因とは言えません。
今回比較したMサイズ同士では、SLC5を基準にするとT1600 ULTRAはStackが約10mm低く、Reachは約6mm長くなっています。さらに、ハンドル形状やステム角、コントロールレバーの取り付け位置などによっても、実際のブラケット位置は変わります。
ただ一つ確実に言えるのは、「今115mmを使っているから、HYPER 2も115mmを選べば同じポジションになる」とは限らないということです。
場合によっては、今回のようにステム長を10mm短くしても、実際にはハンドルが遠く感じることもあります。
また一体型ハンドルの場合、一般的なステムとハンドルの組み合わせとは違い、ステム部分からハンドル部分へのつながり方そのものにも独自の形状があります。
ですのでHYPER 2へ交換する場合は、単純なステム長だけではなく、現在のコラムスペーサー量やフレームジオメトリ、実際のブラケット位置まで含めて考える必要があります。
③専用マウント
もう一つ注意したいのが、サイクルコンピューターやライトなどを取り付けるためのマウントです。
HYPER 2は独特な一体型形状のため、一般的なハンドル用マウントをそのまま取り付けることはできません。基本的にはHYPER 2に対応した専用マウントを使用することになります。
上側にはGarminやWahooなどのサイクルコンピューター、下側にはGoPro規格のマウントを取り付けることができます。
通常の使い方であれば、これで大きく困ることはないと思います。
しかし、ブルベのようにライトを2灯取り付けたい場合や、カメラ、そのほか複数の機器をハンドル周辺へ取り付けたい場合には話が変わってきます。
HYPER 2は上ハン部分が非常に薄く、さらに中央がY字状に絞り込まれているため、汎用マウントを追加できる場所がかなり限られます。
そのためマウント類については、購入前にご自身のロードバイクの使い方を考え、必要な機器を実際に取り付けられるか確認しておいたほうがよいでしょう。
▶HYPER 2をおすすめする場合
HYPER 2が特に向いているのは、ハンドル位置を高くしたい人です。
例えば、コラム長に余裕がなく通常の方法ではこれ以上ハンドルを上げにくい場合や、現状のポジションがきつくハンドル位置を上げたい場合、またより上体を起こしたポジションや、近年よく見られる高めのハンドル位置を試したい場合など、コラムスペーサーを多く積むことなくハンドル位置を高くできるので、かなり良い選択肢になると思います。
また、ライザーバーだからといって剛性を犠牲にしたくない人にも向いています。少なくとも今回使ったHYPER 2については、ハンドル剛性に不満を感じることはまったくありませんでした。
初代HYPER同様、薄いエアロ形状のトップと高い剛性を両立している点も魅力です。
逆に注意したいのは、現在使っているハンドルからポジションをできるだけ変えず、そのまま置き換えたい場合です。
HYPER 2はライザー形状であることに加え、スペーサー構成を変えることで前後位置まで変化します。そのため、ステム長については現在使っているものと同じ数字をそのまま選ぶのではなく、現在のスペーサー量やフレームジオメトリも含めて確認したほうがよいと思います。
では、そんなHYPER 2ですが、WINSPACE以外のバイクにも取り付けることはできるのでしょうか。
HYPER 2はWINSPACEのバイク専用というわけではありません。車種に合わせたヘッドセットトップキャップやスペーサーが用意されており、対応しているフレームであれば他社製ロードバイクにも取り付けることができます。
そのため、WINSPACEユーザーだけに限定されたハンドルではなく、ライザーバーを使いたい人にとっては比較的導入しやすい製品だと思います。
▶まとめ
最近のロードバイクは、単純に軽くするだけではなく、空力性能や転がり抵抗、そしてライダーの姿勢まで含めて、総合的に速さを考える方向へ変わってきています。
これまで「速く走るためにはこうするべき」と考えられてきたことも、機材や計測技術、研究の進歩によって少しずつ変化してきました。ハンドル位置についても同じで、以前は低く遠くするほど速い、というイメージが強かったと思います。
しかし現在では、単純にハンドル位置が高いから空力的に不利、とは一概に言い切れなくなってきています。ハンドル位置を少し高くすることで無理のない姿勢を作り、その姿勢を長時間維持できるのであれば、結果として速く走れる可能性もあります。
つまり、ハンドル単体の高さだけではなく、そのハンドル位置によってライダーがどのような姿勢を取れるのかまで含めて考える必要があるということです。
最近のロードバイクでも、従来とは異なる形状のコックピットや、高めのハンドル位置を作りやすい設計が増えてきました。ライザーハンドルバーも、そうした現在のポジション作りの流れの中にあるパーツの一つなのかもしれません。
HYPER 2は、そうしたライザーハンドルの特徴を持ちながら、WINSPACEのフレーム専用品ではなく、対応するトップキャップやスペーサーを使うことで他社製フレームにも取り付けることができます。
ハンドル位置を高くしたい、現在のポジションに少し無理を感じている、あるいはスペーサーを大量に積まずに高めのポジションを作りたい。そんな場合には、かなりよい選択肢になると思います。
ただし、今回書いたようにライザーハンドルの選択では注意も必要です。スペーサー量を変えればステムの前後位置も変わり、場合によってはステム長を短くしても、以前よりハンドルが遠く感じることがあります。
HYPER 2を選ぶ場合は、ハンドルの高さだけではなく、ステム長やスペーサー量、フレームジオメトリまで含めてポジションを考えることが重要です。
ポジションのお悩みも含め、ご検討中の場合はお気軽にご相談ください。
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