本日のロングライド、最後の最後で思いがけないトラブルが発生しました。走行中、突然Di2が動かなくなってしまったのです。
これまで長年Di2を使用してきましたが、走行中に突然変速ができなくなるというトラブルは、実は今回が初めての経験です。
強いて気になる点を挙げるなら、低めの段差を越えた際に多少の振動があったことぐらいでしょうか。ただし、しっかりと抜重していたため、それほど大きな衝撃ではありませんでした。それまで変速の不具合や気になる異変も一切なく、まさに何の前触れもない突然の沈黙でした。
もっとも、こういうときこそメカニックとしては原因が気になるものです。なぜ突然動かなくなったのか、走りながらいくつかの可能性を考えてみました。
今回は、実際に起きたDi2のトラブルと、その原因を突き止めるまでのお話です。せっかくですので、皆様も一緒に原因を考えながら読んでみてください。
▶突然のDi2の沈黙
まずは、実際にどのような症状が出たのかを整理してみます。
✓① 左右のコントロールレバーが操作不能
走行中、突然変速ができなくなりました。右側のレバーを操作しても、リアディレイラーは全く反応しません。では左側はどうか。こちらも同様に、一切変速ができない状態です。
つまり、前後ともに変速ができなくなった状態です。
✓② Garminとの通信も切断
今回、もう一つ重要な症状がありました。Di2が突然動かなくなったため、Garminの表示も確認してみました。すると、Garminとの接続も切れていたのです。
通常であればGarminにはDi2のバッテリー残量などの情報が表示されるように設定してあります。しかし今回は通信が途絶えてしまい、Di2の情報が一切確認できない状態になっていました。
✓③ リアディレイラー側のケーブルに明らかな異常はない
まず疑ったのは、リアディレイラーに接続されているエレクトリックケーブルです。
この車体では、リアディレイラー付近がエレクトリックケーブルの外部に露出している唯一の部分です。そのため、物理的にケーブルが抜ける可能性を考えたとき、まず確認したいのがこの部分でした。
しかし、軽く確認した限りでは、ケーブルが明らかに抜けている様子はありません。目に見える損傷もなく、コネクター部分も正常に接続されているように見えました。
▶走行しながら原因を推測する
今回の症状で、私が特に重要だと考えたのが、Di2が動かなくなった際、Garminとの通信も途絶えていたことです。
現行のロード用12速Di2では、リアディレイラーに無線通信機能が内蔵されています。コントロールレバーからの変速指示を受信するだけでなく、Garminなどのサイクルコンピューターとの通信もリアディレイラーが担当しています。
つまり、Garminとコントロールレバーが直接通信しているわけではありません。この仕組みを考えると、今回の症状からある程度原因を絞り込むことができます。
例えば、右側のコントロールレバーが故障した場合。当然、右側からの変速操作はできなくなる可能性がありますが、左側のレバーまで同時に故障するとは考えにくいものです。
さらに、レバー側だけの問題であれば、Garminとリアディレイラーの通信まで切断される理由がありません。もちろん、通信設定などの問題も考えられますが、今回のように左右の変速操作が同時に効かなくなり、さらにGarminとの通信まで途絶えたとなれば、単純なコントロールレバーの故障は優先順位が下がります。
つまり、リアディレイラーの通信機能が正常に働いていない可能性が高いわけです。
しかし、リアディレイラーの通信に異常があるからといって、リアディレイラー本体が故障したとは限らないところは注意が必要です。通信機能が正常に働かない理由はいくつか考えられるからです。
今回の症状から、変速不能とGarminとの通信断を引き起こした原因として、主に次の3つが考えられます。
① エレクトリックケーブルの抜け、断線などによる給電トラブル
② リアディレイラー本体のトラブル
③ Di2バッテリーのトラブル
可能性としては、どれもあり得ます。 しかし、これまで多くのDi2を扱ってきた経験からすると、日常的に使用しているDi2用のバッテリーそのものが、何の予兆もなく突然故障するケースは決して多くありません。
少なくとも私がこれまで経験してきたバッテリーの不具合では、事前に何らかの異常や異変が現れ、徐々に状態が悪化していくケースが多い印象です。 もちろん、突然故障する可能性がないという意味ではありません。
それでも今回のように、走行中に何の前触れもなく、一瞬で変速も通信も途絶えてしまったという状況であれば、まず疑いたいのは電源供給や接続の問題です。特に、エレクトリックケーブルの抜けや接触不良は優先的に確認したいところです。
とはいえ、先ほど確認したリアディレイラー側のケーブルには、明らかな異常が見当たりませんでした。となると、フレーム内部の配線やバッテリー周辺など、外から見えない部分で何かが起きている可能性もあります。
幸いにも今回は自宅からそれほど離れていない場所でした。ギアはリアスプロケットの中央より少し軽い位置で固定されていましたが、帰宅する分にはそれほど不自由しないギア比です。
ということで、それ以上の無理な確認はせず、シングルスピード状態のまま帰宅することにしました。
▶原因判明! 意外にも単純なトラブルだった
帰宅後、改めて各部を確認してみました。すると、原因は思いのほかあっさりと見つかりました。
リアディレイラー側のエレクトリックケーブルが、抜けかけていたのです。
なんだ、ケーブルが抜けていただけか。そう思われるかもしれません。しかし、今回少々厄介だったのは、その抜け方でした。
リアディレイラーのエレクトリックケーブル接続部分には、ダストカバーが取り付けられています。このダストカバー自体は正常な位置に収まっていたため、外から目視で確認しただけでは異常が分かりませんでした。
ところが、カバーの内側ではエレクトリックケーブルのコネクターが抜けかけていたのです。完全に抜けていればもっと簡単に気が付いたのでしょうが、今回は絶妙に分かりづらい状態でした。
さらに、もう一つ明らかな異常がありました。エレクトリックケーブルが、全く余裕のない状態でピンと張り詰めていたのです。通常であればもっと余裕があったはずですが、今回はそれが全くありません。
これで変速不能とGarminとの通信断の両方に説明がつきます。しかし、ここで新たな疑問が出てきます。
そもそも、なぜ本来余裕があるはずのエレクトリックケーブルが、これほど強く張られ、コネクターまで抜けかけていたのでしょうか。
▶ケーブルが抜けた本当の原因
とりあえず異常に張られたエレクトリックケーブルを緩めようと、リアディレイラー側からケーブルを少し引き出そうとしました。ところが、何かに引っ掛かっているようで、全く動かず引き出すことができません。
本来、エレクトリックケーブルはフレーム内部である程度の余裕を持たせた長さで組んであります。そのほうが後の整備性も良く、トラブルを防ぐことにもつながるためです。 当然、今回の車体もそのように組んであります。それなのに、リアディレイラー側から引き出そうとしても、ケーブルが全く動かないのです。
つまり、フレーム内部のどこかでケーブルが引っ掛かり、異常に強く張られた状態になっていると考えられます。
ここで思い当たることがありました。
実は前日、このバイクのBBを交換していたのです。以前から発生していたBB周辺の異音を解消するため、BBを交換したばかりでした。
そこで、再びBBを取り外してみることにしました。すると、予想どおり。それまで全く動かなかったエレクトリックケーブルが解放され、リアディレイラー側から問題なく引き出せるようになったのです。
どうやら、前日のBB交換時に、BBのセンタースリーブ周辺でエレクトリックケーブルがどこかに引っ掛かってしまっていたようです。
ケーブル自体には十分な長さがあったものの、BB周辺で動きが制限されたことによって、リアディレイラー側のエレクトリックケーブルにテンションが掛かってしまったと考えられます。
もっとも、BBを取り付けた時点でどの程度のテンションが掛かっていたのかまでは分かりません。ただし、BB交換後もしばらくは問題なく変速できていたこと、そして帰宅後にはコネクターを差し直すことすらできないほどケーブルが張り詰めていたことを考えると、走行中の振動などによってケーブルの位置が徐々に変わり、テンションが増していった可能性があります。最終的には、段差を越えた際の振動がきっかけとなってコネクターが抜けかけたのかもしれません。
なお、ケーブルの外皮には傷や圧迫された痕跡は全く見られませんでした。
通常、BBのセンタースリーブはケーブルが引っ掛かりにくい構造になっています。それでも今回のように、配線の位置や組付け時のわずかな動きなど、いくつかの条件が重なれば、こうしたトラブルが発生することもあるわけです。
最終的にはBBを取り外した状態で配線に余裕を持たせ、エレクトリックケーブルを正常に接続し直して復旧しました。
つまり、今回の原因は単純なケーブル抜け。しかし、実際にはフレーム内部でケーブルが引っ掛かり、リアディレイラー側のケーブルが全く余裕のない状態になっていたのです。
これでは、いくらコネクターを差し直そうとしても、物理的に長さが足りず、正常に接続することができません。
原因は単純でも、その原因を取り除くためにはBBを取り外す必要があり、出先では簡単に修理できるようなトラブルではなかったのです。
▶エレクトリックケーブルの取り扱いと注意点
今回のトラブルで、特に注意していただきたいことがあります。
エレクトリックケーブルが引き出せないからといって、絶対に無理やり引っ張らないことです。
これは非常に重要です。今回のように、本来余裕があるはずのケーブルが全く動かない場合、フレーム内部で何らかの干渉や引っ掛かりが発生している可能性があります。
そんな状態で力任せに引っ張れば、エレクトリックケーブルの断線やコネクターの破損など、さらに大きなトラブルを引き起こしかねません。
特に現行12速Di2で使用されているSD300系のエレクトリックケーブルは、従来のSD50系よりもさらに細くなっています。細くなったことでフレーム内部の配線などで扱いやすくなった一方、細い電装ケーブルだけに、引っ張りや無理な曲げには十分な注意が必要です。
そもそも、エレクトリックケーブルが内部で何かに引っ掛かっている場合、軽く引いても動かないものを、さらに強い力で引っ張ったところで解決することはほとんどありません。むしろ、引っ掛かっている部分を支点として、ケーブルやコネクターに余計な負荷を掛けてしまうだけです。
特にフレーム内部のカーボンのバリなどに引っ掛かっている場合は注意が必要です。鋭利な部分にケーブルが接触した状態で無理に引っ張れば、いとも簡単に外皮が傷つき、場合によっては断線につながることもあります。
重要なのは力を加えることではなく、なぜケーブルが動かないのか、その原因を見つけることです。
今回も、無理に引っ張らずにBBを取り外したことで、ケーブルを損傷させることなく復旧できました。もし力任せに引っ張っていたら、単純なケーブル抜けだけでは済まなかったかもしれません。
また、シマノのエレクトリックケーブルは、コネクターの接続や取り外しに専用工具を使用することが基本です。ケーブル部分を直接引っ張って抜くような作業も避ける必要があります。
▶有線Di2ならではのトラブル
今回はBB周辺での引っ掛かりが原因と考えられるトラブルでしたが、実は同じようなトラブルは、理屈のうえではほかの場所でも起こり得ます。
例えば、チェーンステー内部のカーボンのバリや、フレーム内部の接合部分。ほかにもボトルケージ台座の裏側や、フレーム内部を通る油圧ブレーキホースなど、ケーブルと干渉する可能性のある場所はいくつもあります。
もちろん、すべてのフレームでこうした問題が発生するというわけではありません。むしろ、そう頻繁に起こるトラブルではありません。
私自身の整備経験でも、ヘッド周辺のケーブルに関係するトラブルと比較すれば、こうしたBB周辺でのエレクトリックケーブル由来のトラブルは決して多くありません。
それでも、有線接続である以上、ケーブルそのものや、その取り回しに起因するトラブルを完全になくすことはできません。 これは有線Di2のデメリットの一つと言えると思います。。
そして今回の原因を考えると、やはり整備後の確認は重要です。自分のバイクだからといって、確認を怠ってはいけないということを改めて痛感しました。
▶まとめ
今回の話を読んで、「Di2は突然動かなくなるから信用できない」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、今回のトラブルではリアディレイラーもバッテリーも故障していませんでした。電子制御そのものに問題があったわけではなく、原因は非常にアナログな部分にあったのです。
私は、こういったトラブルを考えるとき、単に「何が起きたか」だけではなく、「なぜそうなったのか」という部分が重要だと思っています。どれだけ優れた機材であっても、トラブルが絶対に起こらないものなどありません。大切なのは、その原因を正しく理解し、対処することだと思います。
ちなみに、有線Di2には今回のようなリスクがあるわけですが、だからといって個人的には完全ワイヤレスのほうが良いとも思いません。配線がなくなるメリットは理解できますが、その代わりにリアディレイラーがぼってりと大きくなってしまうのであれば、私は今の構造のほうが好みです。
今回のトラブルでは有線接続ならではの弱点を実感しましたが、だからといって有線Di2に対する評価が変わったわけではありません。
それにしても、BBの異音を直した翌日に、今度はDi2まで沈黙してしまうとは、、、
静かにしてほしかったのは、BBだけだったのですが(笑)。
+++++++++++++++++++++++++++
FF-Cycle(エフエフサイクル)
〒262-0019
千葉県千葉市花見川区朝日ヶ丘1-21-2
※当日の受付は18:00までとさせていただきます。
作業は18:00以降も行います。
TEL:043-376-1121
(整備中、接客中等 電話を受けれない場合は番号通知にておかけいただければ折り返しお電話をさせていただきます。)
E-Mail:ffcycle@outlook.jp
※ご連絡をいただく際には
・お名前
・ご連絡先
・ご希望の整備内容
・ご希望の日程
こちらをお申し付け下さい。
また整備内容によっては、車体メーカー、モデル名、ホイール、コンポーネントなども合わせてご連絡をお願い致します。
ロードバイクの健康診断・カスタマイズ相談的なこともお受けいたします。当店の特徴・詳細ははこちらから


コメント