今年も暑かった夏がようやく終わり、すっかり秋らしい気候になってきました。
とは言っても、今年の夏は暑さ以上に、雨が印象的な夏でした。
とにかく雨の日が多く、満足に外を走れなかった方も多かったのではないでしょうか。
そんな夏が過ぎ、最近では気持ちの良い秋晴れの日も増えてきました。
今の時期、ロードバイクに乗るには本当に気持ちの良い季節です。
真夏のように暑さに苦しめられることもなく、少し長めに走っても快適。気温が下がったことで、以前よりも調子よく走れると感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、夏から秋へと季節が変わることで、私たちの身体にもさまざまな変化が起こります。
せっかく走りやすい季節になったのに、調子を落としてしまってはもったいないものです。
そこで今回は、秋になると身体や走りにどのような変化が起こるのか。そして、秋のライドで気をつけておきたいことについて考えてみたいと思います。

▶ 秋に見られる変化
① 秋はパワーが出やすくなる
夏から秋にかけて、最もわかりやすい変化の一つがパワーです。
暑い時期には思うように出せなかったパワーが、気温が下がるにつれて出しやすくなることがあります。
夏場の暑い環境で運動を続けると、身体は発生した熱を外へ逃がすため、皮膚への血流を増やしたり、発汗によって体温を下げようとしたりします。しかし、運動強度が高くなるほど発生する熱も大きくなり、体温調節そのものが身体への負担になります。
結果として、暑さが持続的なパワー発揮を制限する要因になっています。
一方、秋になって気温が下がると、身体から熱を逃がしやすくなり、暑さによる負担も小さくなります。
そのため、同じように頑張っているつもりでも、夏より高いパワーを維持できることがあります。
もちろん、夏場に積み重ねてきたトレーニングの成果も忘れてはいけません
暑さや、決してトレーニングがしやすい環境ではなかったとしても、継続してトレーニングに取り組んできたのであれば、その積み重ねが体力の向上につながっていることも十分に考えられます。
つまり、夏場のトレーニングによって培ってきた能力に加え、秋になって暑さというパワーの発揮を制限する要素が一つ減ることで、これまで以上に高いパフォーマンスを発揮しやすくなるということです。
夏の間は思うように出せなかったパワーが、秋になって出せるようになる。そんな変化も、季節が変わる楽しみの一つだと思います。
② 同じパワーでも心拍数が変わる
パワーと同じように、気温によっても影響を受けるのが心拍数です。
夏場は、普段と同じパワーで走っているにもかかわらず、いつもより心拍数が高くなる、という経験をした方もいると思います。
暑い環境では体温調節のために皮膚への血流が増え、発汗による水分の損失なども重なるため、心臓への負担が大きくなりやすくなります。
こうした影響によって、夏場は心拍数が高く出やすくなる傾向にあります。
一方、秋になって涼しくなると、こうした暑さによる身体への負担が軽減され、同じパワーでも心拍数が低くなることがあります。
そこで注意点があります。それは心拍数を基準としたトレーニングです。
そこで注意点があります。それは心拍数を基準としたトレーニングです。
例えば、夏場は250Wで走ると心拍数が160bpmだったのに、秋になると同じ250Wでも150bpm程度で走れるようになったとします。
同じパワーでも心拍数が低くなれば、以前より余裕を持って走れるようになったと考えることもあると思います。もちろん、夏場に積み重ねてきたトレーニングによって、持久力が向上している可能性も十分にあります。
そして、そこに気温の低下による身体への負担の軽減も加わります。
つまり、夏場のトレーニングによる成長と、暑さによる負担が小さくなったこと、この両方が心拍数の変化に関係している可能性があるということです。
一方で、心拍数を基準にトレーニングをしている場合には、少し注意が必要です。
夏場と同じ心拍数を目標に走ろうとすると、涼しくなった秋には以前より高いパワーで走ることになる場合もあります。
心拍数は体調や疲労を知るためにも便利な指標ですが、気温によって変わるものでもあります。
夏場に積み重ねてきたトレーニングの成果を感じられるのは嬉しいことです。そのうえで、気温によって心拍数の出方も変わることを理解し、パワーや身体の感覚と合わせて判断していくと、より適切な強度でトレーニングを続けられると思います。
③ パワーが出ても、タイムが速くなるとは限らない
気温が下がってパワーが出しやすくなれば、当然タイムも速くなりそうなものです。
しかし、実際にはそうとも限りません。
その理由の一つが、空気抵抗です。
空気は気温によって密度が変わり、一般的には気温が低いほど空気密度が高くなります。
例えば、同じ気圧という条件で気温30℃と15℃を比較すると、15℃のほうが空気密度は約5%高くなります。
空気抵抗は空気密度に比例するため、速度や乗車姿勢などが同じであれば、気温が低いほうが空気抵抗は大きくなります。
もちろん、空気抵抗が5%増えたからといって、タイムがそのまま5%遅くなるわけではありません。また、実際の走行では風向きや風速、気圧、ウェアなども影響します。
それでも、気温が下がることは、空力面では必ずしも有利に働くわけではないのです。
つまり、夏よりパワーが出ているのに、同じコースのタイムが思ったほど伸びないということも十分に考えられます。
特に普段から決まったコースでタイムを計測している方は、こうした気象条件の違いも知っておきたいところです。
イムが伸びなかったからといって、必ずしもパフォーマンスが落ちたとは限りません。パワーや心拍数、風などの条件も含めて判断することをおすすめします。
④ 寒暖差と日照時間の変化
秋になると、日中は暖かくても朝晩はかなり冷え込むようになります。
例えば、最近では朝の気温が15℃でも、日中には25℃を超えるような日もあります。
このように、一日の中で気温が大きく変化することも秋の特徴です。
走り始めは寒かったのに、日が昇るにつれて暑くなってくる。あるいは、昼間は快適だったのに、帰りが遅くなって急に寒くなることもあります。
また、気温だけではなく、運動強度によっても身体の感じる暑さや寒さは変わります。
登りで汗をかいた後、下りに入ると急に身体が冷える。長い休憩を挟んだ後、再び走り始めると寒さを感じる。こうした経験も増えてくる時期です。
そして、もう一つ変わるのが日照時間です。
夏に比べて日の出は遅くなり、日没は早くなります。
日光は私たちの体内時計を調節する重要な要素でもあり、光を浴びる時間帯や量は、睡眠や覚醒のリズムにも関係しています。
もちろん、日照時間が短くなったからといって、必ず体調が悪くなるわけではありませんが、朝起きてもまだ暗かったり、以前と同じ時間に帰宅してもすっかり暗くなっていたりと、生活環境は少しずつ変わっていきます。
普段から早朝に走る方は、睡眠時間を十分に確保できているか、朝に日光を浴びる機会が減っていないか、といった点も意識してみると良いと思います。
また、身体への影響とは別ですが、日没が早くなるということは、予定していた時間内に暗くなる可能性も高くなるということです。前後ライトの準備なども、夏以上に気をつけておきたいところです。
▶ 秋のライドで気をつけたいこと
ここまでは、秋になると身体や走りにどのような変化が起こるのかを見てきました。
では、こうした変化を踏まえて、実際のライドではどんなことに気をつければ良いのか考えてみます。
① ウォーミングアップ
まず気をつけたいのが、走り始めのウォーミングアップです。
夏場は気温そのものが高いため、走り始めから身体が温まりやすい環境にあります。しかし、秋になって気温が下がると、身体が十分に温まるまでに時間がかかる場合があります。
筋肉は温度によって働き方が変わり、筋温が上がることで、素早い力の発揮などが改善することも知られています。
特に注意したいのは、走り始めてすぐに高いパワーを出すような場面です。
夏と同じ感覚でいきなり踏み始めても、身体が思うように反応してくれないことがあります。
また、ウォーミングアップはパフォーマンスだけでなく、筋肉や腱、関節などにかかる負荷を段階的に高めるという意味でも大切です。身体が十分に温まっていない状態で、いきなり大きな負荷をかけることは避けたいところです。
そのため、気温の低い朝などは、最初の10〜20分程度を目安に軽い強度から走り始め、徐々に身体を慣らしていくと良いと思います。
もちろん、必要なウォーミングアップの長さは、その日の気温や体調、その後に行う運動強度によっても変わります。
ゆっくりしたサイクリングであれば走りながら身体を温めれば良いですし、インターバルトレーニングやレースなどで最初から高い強度を求められる場合は、より計画的なウォーミングアップが必要になります。
大切なのは、走り始めから無理にパワーを出そうとせず、身体が動く状態をつくってから強度を上げることです。
② 走りやすいからこその「乗りすぎ」
個人的に、秋のライドで特に気をつけたいと思っているのがこれです。
とにかく走りやすいですし、楽しいのです。
夏場は暑さが厳しく、長時間走ること自体が大きな負担になります。暑さに耐えながら走ることも多く、早めに帰ろうと思うこともあると思います。
ところが秋になると、暑さによる不快感が大きく減ります。
気持ちが良いから、もう少し走ろう。調子も悪くないし、せっかくだから距離を伸ばそう、とついつい長く乗ってしまうことがあります。
また、先ほど触れたように、涼しくなるとパワーも出しやすくなります。
本人としては夏と同じような感覚で走っているつもりでも、実際には平均パワーが上がっていたり、いつもより高い強度で走り続けていたりすることも考えられます。
つまり、走りやすくなったことで走行時間が長くなり、さらにパワーも高くなる。結果として、夏場よりもトレーニング負荷が大きくなっていることがあります。
もちろん、たくさん走れること自体は悪いことではありません。
むしろ、暑さに制限されず、長時間のトレーニングに取り組みやすくなることは、秋の大きなメリットだと思います。
ただし、走っている最中に快適だからといって、身体に疲労が蓄積していないとは限りません。
特に気をつけたいのは、本人がそれほど頑張ったつもりではなくても、実際のトレーニング負荷が増えている場合です。
走りやすい季節だからこそ、走行時間や距離だけでなく、どのぐらいの強度で走っているのかにも目を向けたいところです。
③ 水分とエネルギー補給
走行時間が延び、運動強度も高くなりやすい秋には、補給にも注意が必要です。
✓ 水分
夏場は大量に汗をかくため、水分補給を意識する機会も多くなります。
しかし、秋になると発汗量が減り、夏ほど喉の渇きを感じなくなることがあります。実際に、寒い環境では喉の渇きを感じにくくなることが研究でも報告されています。
もちろん、夏ほど汗をかかないのであれば、必要な水分量が減ること自体は自然なことです。
ただし、涼しくなったからといって、水分が必要なくなるわけではありません。
運動中は秋でも汗をかきますし、特に長時間のライドでは、気づかないうちに水分不足になることも考えられます。
喉が渇かないからといって、まったく飲まずに走り続けるようなことは避けたいところです。
水分補給が不足すると、脱水によって体温調節が難しくなったり、心拍数が上がりやすくなったりすることがあります。その結果、いつもよりバテやすくなってしまうこともあります。
例えば、ある程度汗をかくようなライドであれば、1時間あたり500mL、一般的なボトル1本程度を一つの目安とすると良いと思います。
もちろん、気温が低く、ゆっくり走るのであればそれほど必要ない場合もありますし、逆に気温が高かったり、運動強度が高かったりすれば、さらに多くの水分が必要になることもあります。
実際に必要な水分量は、発汗量や気温、運動強度などによって大きく変わります。決まった量を無理に飲むのではなく、その日の条件に合わせて調整することが大切です。
涼しくなったからと水分補給を忘れてしまわないよう、意識しておきたいところです。
✓ エネルギー
また、水分だけでなく、エネルギー補給も重要です。
暑さによる制限が小さくなり、夏より高いパワーで長時間走れるようになれば、その分だけ運動中に消費するエネルギーも増えていきます。
さらに、先ほどの話のように、走りやすいからと距離を伸ばしてしまえば、当然ながら必要なエネルギーも増えます。
それなのに、補給を軽く考えてしまうと、ライド後半でエネルギー不足になったり、回復に影響が出たりすることが考えられます。
では、どのぐらいの補給が必要なのでしょうか。
一般的に1〜2.5時間程度の持久系運動では、1時間あたり30〜60gの糖質補給が目安とされています。100kcalのエナジージェル(糖質約25g)であれば、1時間あたりおよそ1〜2個半程度です。
また、これからレースを控えている方は、1時間あたり60g程度の糖質を無理なく摂れるよう、普段から補給の練習をしておくのもおすすめです。さらに2.5時間を超えるような長時間のレースでは、運動強度や競技時間に応じて、1時間あたり90g程度まで増やすことも選択肢になります。
ただし、いきなり補給量を増やすと胃腸のトラブルにつながることもあるため、内容も含めて自分に合った量を少しずつ見つけておきたいところです。
水分も糖質も、夏と同じ量を機械的に摂れば良いわけではありません。気温だけでなく、その日の運動強度や走行時間に合わせて考えることが大切です。
涼しくなっても、走った分だけ補給は必要というのは、当たり前のことですが、秋だからこそ意識しておきたいポイントだと思います。
④ パワーが出やすくなるからこそ、回復にも注意
最後に気をつけたいのが、トレーニングによる疲労と回復です。
ここまで、秋になるとパワーが出しやすくなり、走行時間も長くなりやすいという話をしてきました。しかし、それは必ずしも身体の回復能力まで高くなったということではありません。
先ほども触れたように、秋は暑さによる制限が小さくなり、本来持っている力を発揮しやすくなります。
もちろん、夏場のトレーニングによって実際に能力が向上していることもあると思います。しかし、気温が下がったからといって、身体の能力そのものが急激に向上したわけではありません。
そして重要なのは、暑さによる負担が軽減されても、高いパワーを出したことによるトレーニング負荷まで小さくなるわけではないということです。
涼しくなることで、それまでより高いパワーでも比較的楽に感じられることがあります。しかし、涼しくなって身体が楽に感じられることと、トレーニングによる疲労が少ないことは必ずしも同じではありません。
同じ時間でも、これまで以上に高いパワーで走れば、それだけ身体にかかる負荷も大きくなります。高い強度のトレーニングを行えば、その後には負荷に見合った回復が必要です。
また、秋は朝晩と日中の寒暖差が大きくなる時期でもあります。こうした気温の変化や日照時間の変化などによって、人によっては体調や睡眠のリズムに影響が出ることもあります。
せっかくトレーニングの質を高められる季節になっても、十分に回復できなければ、積み重なる疲労によってパフォーマンスが低下してしまう可能性もあります。
その日は気持ちよく走れたのに、翌日になって脚が重い。いつも通りの練習をしようとしても、思うようにパワーが出ない。
そんな状態にならないためにも、走りやすい季節だからこそ、疲労と回復のバランスを意識しておきたいところです。
パワーが出るようになると、ついつい頑張りたくなってしまうものです。
しかし、高いパワーが出せるようになったからこそ、その負荷に見合った回復も大切になるということです。
秋はトレーニングに取り組みやすい季節ですが、調子が良いからといって毎回頑張りすぎるのではなく、疲労や睡眠、身体の状態を確認しながら、うまくトレーニングを積み重ねていきたいところです。
走りやすいことと、疲労が残らないことは別の話なのです。
▶ まとめ 走りやすい秋だからこそ、身体の変化を知っておきたい
長く厳しい夏が終わり、秋はロードバイクにとって本当に走りやすい季節です。
暑さによる制限が小さくなることで、これまで以上にパワーを発揮しやすくなり、夏場に積み重ねてきたトレーニングの成果も感じやすくなる時期だと思います。
一方で、気温が変われば心拍数や空気抵抗なども変わります。また、朝晩の寒暖差や日照時間の変化、ウォーミングアップや補給など、夏とは違った注意も必要になります。
そして、走りやすいからこそ、ついつい長く乗ってしまう。調子が良いから、いつも以上に頑張ってしまう。そうしたことが、知らず知らずのうちに疲労をため込む原因になることもあります。
これからの時期、まだまだ本命のレースを控えている方も多いと思います。
レースが近づいてくると、少しでも強くなりたい、もう少し練習しておきたいという気持ちになるものです。特に真面目にトレーニングに取り組んでいる人ほど、ついつい頑張りすぎてしまうこともあると思います。
パワーや心拍数、トレーニング負荷など、今ではさまざまなものを数値で確認できるようになりました。もちろん、これらは自分の状態を知るための大切な情報です。
しかし、数字だけではわからないこともあります。
自分の身体がどのように反応しているのか。疲労が残っていないか。本当に今日は頑張るべき日なのか。
そうしたことを自分自身で考え、身体の状態を理解することも、トレーニングを続けていくうえで大切なことだと思います。
せっかくの走りやすい秋です。気持ちよく走れることを楽しみながら、頑張るときは頑張る、休むときはしっかり休む。
これからのレースに向けても、良いコンディションを維持していきたいものです。
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