9月下旬に導入したばかりの、シマノの新型DURA-ACEペダル「PD-R9300」です。

実際に使い始めてから約1か月が経過しましたが、使用感については非常に満足しています。特にペダリング時のダイレクト感は旧型PD-R9100との違いをはっきりと感じられる部分であり、これだけでも新型を選ぶ理由になるほどのメリットだと思っています。また、クリートキャッチのしやすさについても、決定的な違いとまでは言いませんが、実際に使ってみると確かに良くなったと感じられる部分です。

このように、ペダルとしての性能には十分満足しているのですが、使用開始からわずか1か月で、少々気になる異変が見つかりました。

それは、ペダルを構成するある金属部品に発生した錆です。

金属部品である以上、使用環境や管理状態によって錆が発生すること自体は、それほど珍しいことではありません。私自身、雨の日でもロードバイクに乗りますし、金属部品が錆びることも十分に理解しています。

しかし、今回の錆については、単なる外観上の問題として片付けることはできないと考えています。「雨の日も走るのだから仕方がない」では済ませられない、明確な理由があるためです。

では、なぜ今回の錆をそれほど問題だと感じているのでしょうか。

今回は新型PD-R9300と、これまで長年使用してきた旧型PD-R9100を実際に比較しながら、この問題について考えてみたいと思います。


▶ 使用開始わずか1か月の変化

まずはこちらの画像をご覧ください。
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ペダル軸の根元付近にある銀色の金属部品に、茶褐色の点状の錆が発生しています。

今回、錆が発生しているのは、シマノの展開図で「Threaded cone and lock nut」と記載されている部分のうち、Threaded cone(玉押し)と呼ばれる部品です。

この玉押しには工具をかけるための六角部が設けられており、ベアリングの玉当たりを調整した後、ロックナットを締め込むことで固定する構造になっています。今回の錆は主にこの六角部に発生しており、特にペダルの前方から上部にかけて確認できます。

しかも片側だけではありません。左右さはあれども両方のペダルに同様の錆が発生しており、左側のほうが若干多い状態です。
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新品時には、このような錆はありませんでした。また、今回の異変に気が付いてから表面の汚れを落として状態を確認しましたが、錆はそのまま残っていました。

つまり、使用開始から約1か月の間に、左右両方の玉押しに錆が発生したということです。


▶この部分の錆の発生が問題だと思う理由

今回、この部分に発生した錆を問題だと考えているのには、大きく分けて二つの理由があります。

① 旧型PD-R9100との比較

まず一つ目の理由が、旧型PD-R9100との比較です。

実は私の手元には、旧型PD-R9100が2セットあります。一つは6年以上、走行距離にして約10万km使用してきたもの。もう一つは使用期間が3か月程度のものです。

まずは、6年以上使用してきたPD-R9100の同じ部分の画像です。
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いかがでしょうか。新型PD-R9300では玉押し部分に明らかな錆が発生している一方で、旧型PD-R9100には同じ部分に錆がまったく見られません。
※片側のペダル軸アッセンブリーには交換履歴がありますが、交換したペダル軸にも同様の錆は見られませんでした。

しかも旧型は、決して雨の日を避けて大切に使用してきたペダルではありません。私は基本的に雨の日でもロードバイクに乗りますし、雨の日のあとは洗車もします。 冬場には凍結防止剤が散布されているような道路も普通に走ってきました。それでも、6年以上使用してきた旧型では、この部分に錆が発生することは一度もありませんでした。

さらに、もう一つの使用期間約3か月のPD-R9100についても確認しましたが、こちらにも錆は一切見られません。
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また、私は仕事柄、さまざまな使用環境のお客様のロードバイクを整備しています。中には錆が発生しやすい環境で使用されている方もいますが、これまで旧型PD-R9100の同じ部分に、今回のような錆が発生しているのを見た記憶はありません。

つまり、旧型PD-R9100を2セット使用し、長年にわたって問題のなかった部分に、新型PD-R9300ではわずか1か月で錆が発生してしまったということです。しかも、それが左右両方のペダルで起きています。

使用環境や管理方法を大きく変えたわけでもないのに、これだけ明確な違いが出ていることには、何らかの理由があるのではないかと考えています。

② 玉押しという部品の耐久性への不安

二つ目の理由は、錆が発生している部品そのものの問題です。

今回確認できた錆は、外側から見える部分に発生しているものです。現時点ではペダルの回転性能などへの悪影響は確認できていませんが、今後この錆がどこまで進行するのかという不安があります。

特に気になるのは、玉押しの構造です。

Threaded coneには玉当たり調整のための六角部が設けられており、さらにロックナットで固定するためのネジ山も切られています。

今回、このネジ山部分にも錆が確認できています。

六角部だけの錆であれば、多少腐食が進んでもすぐに機能上の問題が出るとは限りません。しかし、ネジ山部分の腐食が進行すると話は変わってきます。ロックナットの固着によって玉当たり調整や分解が難しくなったり、無理に緩めようとすることでネジ山を傷めたりする可能性があります。そうなれば、単なる外観上の錆では済まなくなってしまいます。

そして、もう一つ気になるのがベアリング内部への影響です。

こちらは以前、旧型PD-R9100を分解メンテナンスした際の画像です。
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長期間の使用によってグリスは汚れ、劣化も進んでいます。しかし、確認した範囲ではベアリングや周辺の金属部品に錆の発生は一切見られず、付着した汚れもクリーニングによって除去できる状態でした。

こうした状態を見ると、改めて旧型PD-R9100の耐久性の高さを感じます。グリスが劣化しても、金属部品そのものが良好な状態を保っていれば、メンテナンスによって長く使い続けることができます。

では、新型PD-R9300ではどうなのでしょうか。

今回錆が発生したThreaded cone(画像の部分)は、外側に露出している部分と、内部でベアリングに接する部分が一つの部品としてつながっています。外側と内側では表面の仕上げが異なる可能性がありますし、内部はグリスによって保護され、使用環境も異なります。そのため、外側に錆が発生したからといって、内部も同じように錆びているというわけではありません。

しかし、同じ部品の外側にこれほど短期間で錆が発生しているのを見ると、内部の耐食性についても疑問を感じてしまいます。万が一、内部に水分が侵入した際にも腐食が発生しやすいのであれば、ベアリングの接触面に錆が発生する可能性も考えられます。そうなれば、回転性能やベアリングの寿命にも影響する問題です。

現状新型のペダルで確認できているのは外側に発生した錆ですが、使用開始から約1か月でこの状態です。今後、3か月、半年、そして1年と使用を続けたときに、どこまで腐食が進行するのか。玉押しという部品の役割を考えると、長期的な耐久性には不安が残ります。


▶ 原因を推測する

では、なぜ新型PD-R9300では、これほど短期間で錆が発生してしまったのでしょうか。現時点では原因を特定できていませんが、考えられる可能性を整理してみたいと思います。

① 使用環境による影響

まず考えられるのが、使用環境による影響です。

ただし、今回については使用環境が主な原因だとは考えにくいです。新型に交換したからといって、ケミカル類も含めて使用方法や管理方法を変えたわけではなく、旧型と基本的に同じような環境で使用しているためです。

錆の発生にはさまざまな条件が関係しますが、今回の新旧の違いを考えると、使用環境だけではなく、製品側にも何らかの要因があるのではないかと考えています。

② 部品の品質や表面処理の変化

そこで私が特に気になっているのが、錆の発生したThreaded coneの材質や表面処理です。

Threaded coneはベアリングの玉押しとして機能する部品であり、一般的には硬度を確保した鉄系材料が使用されます。こうした鋼製部品では、耐食性を確保するためにめっきなどの表面処理が用いられることがあります。

そこで疑問になるのが、旧型PD-R9100と新型PD-R9300で、この部分の材質や表面処理に変更があったのかということです。

例えば、表面処理の種類や膜厚、製造工程などが変更されていれば、それによって耐食性に違いが生じる可能性があります。また、仮に旧型と同じ仕様であったとしても、表面処理の品質や製造ロットによるばらつきなどによって、今回のような腐食が発生する可能性も考えられます。

もし新型で表面処理の仕様自体が変更され、それが今回の発錆につながっているのであれば、単純に新品へ交換したとしても同じ問題が再発する可能性があります。一方で、旧型と仕様が変わっていないのであれば、今回の個体に何らかの製造上の問題があった可能性も考えられます。

現時点では、新旧のThreaded coneについて材質や表面処理に変更があったのかどうかは分かっていません。今回の比較だけで、新型PD-R9300全体の耐食性が低下したと結論づけることもできません。

それでも、これまで旧型では経験しなかった錆が、新型では短期間で発生したことには、何らかの理由があるはずです。それが製品仕様の変更によるものなのか、それとも製造品質など個体固有の問題なのか、非常に気になるところです。


▶ まとめ 新型PD-R9300の耐久性に残る疑問

新型PD-R9300については、これまで使用してきた中で、ペダルとしての性能には非常に満足しています。その評価は今回の件があったからといって変わるものではありません。

ただ、ロードバイクのパーツは、新品時の性能が優れていればそれでよいというものではないと思っています。使い始めたときの性能をどれだけ長く維持できるのか、そして年単位で使い続けられる耐久性があるのか。そういった部分も含めて、製品としての完成度が決まるものだと考えています。

私はこれまで、シマノのペダルは他社製品と比較しても非常に耐久性が高いと考えてきました。実際に長年使用してきた経験から、性能だけでなく、その耐久性に対しても高い信頼を置いています。

だからこそ、今回のような早期発錆が起きてしまったことは残念ですし、新型でもこれまでと同じような信頼性が保たれているのか、気になるところです。

また、ロードバイクの整備を仕事としている立場からは、お客様が使用した場合のことも考えてしまいます。私自身は日常的に機材の状態を確認していますが、すべてのユーザーが同じように管理しているわけではありません。もし今回の発錆が新型の部品仕様に起因するものであれば、より腐食が進みやすい環境では、さらに問題が大きくなる可能性もあると思います。

新型になって性能が向上することは、ユーザーとして非常に歓迎したいことです。しかし、その一方で、これまで備わっていた耐久性が犠牲になってしまうのであれば、それを単純に進化と呼んでよいのかは疑問です。

今回の件については、すでにシマノへ問い合わせを行い、現物を確認していただくための手続きを進めています。原因がどこまで明らかになるかは分かりませんが、今後の経過についても引き続き確認していきたいと思います。

▶ あとがき

今回のような話を書くと、「最近のシマノは品質が落ちたのでは?」といった意見も出てくるかもしれません。

当店では、お持ち込みのパーツや車体の整備にも対応しているため、当店で取り扱っているメーカーに限らず、日頃からさまざまな製品に触れる機会があります。そうした経験を踏まえても、私は現在のシマノの品質や耐久性に対する考え方を非常に高く評価しています。

単純な性能だけでなく、安全性や整備性、長期間使用することまで想像以上に考えられた製品が多く、実際に整備をする立場だからこそ、その良さを感じる場面も少なくありません。また、製品保証を含めたアフターサポートについても、信頼を置いているメーカーの一つです。

今回の錆についても、まだ原因が分かっているわけではありません。製造上の予期せぬ問題という可能性もありますし、今回の一例だけでシマノ全体の品質を判断するつもりもありません。

むしろ、これまで積み重ねられてきたシマノ製品への信頼があるからこそ、お客様にも安心しておすすめし、販売することができています。そして、新型製品にも当然それと同じような品質を期待しています。

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